自社で運営していた採用系のSEOメディアを、先日数十万円で売却しました。買ってくれたのは、コワーキングスペースでたまたま知り合った会社です。
このサイトは、記事の下書きもデータ収集も、生成AIに任せて作ったものです。ゼロから21記事を積み、検索からの流入が週182クリック・表示72,795回まで育ったところで、手放しました。
この記事は「AIで作ったサイトが売れました」という自慢話ではありません。むしろ逆で、売却の話が出て初めて、“ただ動いているサイト”と”買い手がつく資産”はまったく別物だと分かった、その気づきの記録です。作る技術の話は世の中にあふれています。ここでは、その先にある「売れる資産にする条件」を書きます。
何を、いくらで売ったのですか?
自社運営の採用系メディア(記事21本)を、数十万円で個人間に近い形で譲渡しました。
前提を先に開示します。都合の悪い部分も含めて、事実だけを書きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 自社運営の採用系メディア(業種の詳細は運営上の理由で伏せます) |
| 規模 | 記事21本。売却直前で週182クリック・週72,795表示(Search Console実測) |
| 作り方 | 記事の下書き・データ収集をAIに、企画確定と公開判断を人が担当 |
| 買い手 | コワーキングスペースで知り合った会社 |
| 金額 | 数十万円(小規模メディアの個人M&Aで一般的な水準) |
| 引き継いだもの | ドメイン・全記事・運用手順(どうやって記事を回すか)の3点 |
数字はすべて前回の実験記事で公開したものと同じ、Search Consoleの取得値です。成長の過程(週32クリックから182まで)はそちらに詳しく書いています。この記事は、その続き——**“育てた後、どう手放したか”**の話です。
なぜ売れたのですか?「作れた」からではありません
買い手が評価したのは記事の数でも順位でもなく、「引き継いだ後も、同じように運用できるか」でした。
商談で最初に聞かれたのは「これ、自分たちで回せますか?」でした。順位や流入は、買った瞬間から下がりうる。買い手が本当に見ていたのは、手放した後も資産が生き続けるかどうかだったのです。
売れた理由を分解すると、こうなります。
| 売れた要因 | 中身 | なぜ効いたか |
|---|---|---|
| テーマの継続性 | 一過性の話題ではなく、需要が続く採用系テーマ | 買った後も検索需要が消えない |
| 運用の引き継ぎやすさ | 「毎週この手順で回す」が言語化されていた | 属人化しておらず、担当が代わっても動く |
| 数字の透明性 | Search Consoleの生データをそのまま開示 | 盛った資料ではないので、買い手が信用できた |
| 記事の資産性 | 21本が相互にリンクし、まとまりがあった | バラバラの記事群ではなく”メディア”として渡せた |
逆に言えば、この4つが無かったら、同じ数字でも売れなかったと思います。特に効いたのは「運用の引き継ぎやすさ」です。私たちは記事をループエンジニアリングの考え方で回していました。入口データ・選ぶ基準・実行・検証・人の承認、という一周を手順化していたので、それをそのまま渡すだけで済んだのです。
AIで作ったことは、売却でプラスでしたか?
プラスでした。ただし「AI製だから高く売れた」のではありません。「AIで回る手順ごと渡せた」ことが価値になりました。
ここは誤解されやすいところです。買い手は「AIが書いた記事」に価値を感じたわけではありません。むしろ、AI生成のコンテンツそのものはコモディティです。評価されたのは、“AIに何をどう任せ、どこを人が握るか”の設計——つまり運用の仕組みのほうでした。
- 価値が低かったもの: 「すごいプロンプト」「AIが書いた大量の下書き」。これ単体は誰でも作れる
- 価値が高かったもの: 「毎週この基準で直す対象を選び、AIに下書きさせ、人が公開を決める」という回し方。これは真似しづらい
数十万円という金額は、妥当だったのですか?
小規模メディアの相場からすると妥当な線でした。過大でも過小でもありません。
個人・小規模のサイトM&A市場(ラッコM&Aなどが有名です)では、収益サイトはおおむね月間利益の12〜24ヶ月分が一つの目安とされます。ただし今回のように「収益がこれから」の育成初期メディアは、利益倍率では値がつきにくく、流入の実績・記事資産・引き継ぎやすさを総合した相対評価になります。
正直に補足すると、これは1件の取引の話です。相場を保証するものではありませんし、同じ規模でも「引き継げない状態」なら値はつきません。金額よりも、“売れる状態に持っていけたこと自体”が学びでした。
この経験は、どこまで一般化できますか?
「AIで作れば売れる」とは言えません。言えるのは「売れる状態は、作る前に設計できる」ということです。
- これは1サイト・1取引の事例です。業種・タイミングが違えば結果は変わります
- 採用系という需要の続くテーマだったことが、売却を後押ししました。流行りテーマなら同じにはいきません
- 「AIで量産すれば資産になる」ではありません。むしろ量産だけのサイトは、買い手から見ると引き継ぎ価値が低いです
それでも公開する理由は、日本語圏の「AI×SEO」の話が”作り方”で止まっていて、その先の”資産にする・手放す”まで書いた事例がほとんどないからです。
同じことを、自社でやるには?
ツールを選ぶ前に、「売れる4条件」を作る前提に組み込むことです。
- 需要が続くテーマを選ぶ(一過性の話題は資産にならない)
- 運用を手順化する(「毎週この基準で回す」を、人が代わっても動く形で書く)
- 数字を最初から透明に記録する(Search Consoleの生データを残す。後から盛らない)
- 記事をメディアとしてまとめる(相互リンクで、バラバラの記事群にしない)
この4つは、後から足すより、作りはじめる前に決めておくほうが圧倒的にラクです。実行役のAIの選び方はマーケターのAI技術スタックに、運用の一周の設計はループエンジニアリングとはにまとめています。
この売却に関するよくある質問
買い手はどうやって見つけたのですか?
コワーキングスペースで知り合った会社が、ちょうど採用系の集客チャネルを探していました。M&Aプラットフォームに出す前に、雑談から話がまとまった形です。小規模サイトは、こうした対面のつながりから売買が決まることも珍しくありません。
売却でいちばん交渉材料になったのは?
Search Consoleの生データと、運用手順書です。順位や流入は変動しますが、「どう運用してきたか」「買った後どう回せるか」が明確だったことが、価格と成約の決め手になりました。
AIで作ったサイトだと、買い手は嫌がりませんか?
「AIが書いたか人が書いたか」より、**“検索需要に応えられているか・運用が続けられるか”**を見られました。実際に流入している事実の前では、制作手段は大きな論点になりませんでした。
手放した後、そのサイトはどうなりましたか?
引き継いだ運用手順で、買い手側が更新を続けています。この記事は2026年時点の記録です。その後の推移は、共有可能な範囲で分かり次第、追記します(記事上部の更新日をご確認ください)。
今日できる次の一歩は1つです。いま運用しているサイトや業務について、**「自分がいなくなっても、他の人がこの手順で回せるか?」**を一度問い直してみてください。その答えが「イエス」になった瞬間、それは”作業”から”資産”に変わります。